バイク整備の際、マニュアルを見ていると規定トルクが細かく表記されていると思います。
これは、メーカーが安全の為に設定している締め付けトルクで、このトルク管理は非常に重要です。
締め付けが弱いと、走行中にボルトが緩んでパーツが外れることがあり、逆に強く締め付けても、ボルト類の破損や、噛み込んでしまい取り外しが困難になることがあります。
安全に乗るためにも、メーカーが指定したトルクを守ることが大切です。
車用にトルクレンチを持っている方でも、バイク整備とは規定トルクが変わってくるため、ほとんどの場合流用できないでしょう。
そこで今回は、バイク整備用に最適なトルクレンチの選び方とおすすめ品4選を紹介します。
バイク整備に必要なトルクレンチ
まず、トルクレンチの単位は「N·m (ニュートンメートル)」で表示されています。
バイク整備に使う工具は、差込角3/8”(9.5㎜)が最も多く使われています。プラグレンチなどもこのサイズがほとんどで、すでにある程度工具を揃えている方も差込角3/8”のソケットをお持ちだと思います。
市販のバイク用工具もこのサイズが一般的なので、バイク用にトルクレンチを購入するのなら差込角3/8”がおすすめです。
また、計測できるトルクの範囲ですが、これはトルクレンチによって様々です。
5〜25Nmといった繊細なトルク用のトルクレンチもあれば、20〜100Nmの強いトルク用のトルクレンチもあり、ひとつでこれら全ての範囲を測れるトルクレンチはありません。
DIYでバイク整備する際に、トルク管理を必要とする作業は主に次のものだと思います。
- タイヤ交換
- エンジンの組み付け
- 補記類の点検
これらの整備だけでも、一本のトルクレンチで全て見るのは難しいです。最低でも二本は必要になるでしょう。
「ゆくゆくは全部バラす!」という方なら、5~25Nmと20~100Nmというように、二本で広い範囲を測定できるような買い方をおすすめします。
日常の点検整備だけであれば10~60Nmのものを選んでおけばたいていの作業は問題ないでしょう。
そして、トルクレンチ購入前には整備マニュアルを熟読し、必要となるトルクの確認をしておきましょう!
車とバイクでトルクレンチの兼用は難しい
自動車と兼用で使いたいと考えている方もいるでしょうが、多くの場面で兼用は難しいです。
まず当然ながら、バイクと車では規定トルクが大きく異なり、車の方が締め付けトルクは大きいです。
そして自動車整備に使われる工具の多くが差込角1/2”(12.7mm)であり、使用工具が変わるので兼用は難しいです。
とはいえ、例えば「車のタイヤ交換とバイクのタイヤ交換」といった特定の箇所でしか使わないのであれば、その範囲のトルクレンチを購入すれば兼用は可能です。しかし、バイク整備では多くの場面で使い物にならないと思うので、よく考えて決めましょう。
ボルト・ナットの規定トルク参考例
ネジ径 | 参考トルク |
---|---|
M5 | 5 Nm |
M6 | 10 Nm |
M8 | 22 Nm |
M10 | 34 Nm |
M12 | 54 Nm |
上の表のボルト・ナットは、バイクで良く使わているもので、それぞれ締め付けトルクが設定されいます。
整備マニュアルに載っているならそのトルクを守ればいいですが、万が一締め付けトルクが不明だった場合、上記のトルクを参考にしてください。
バイク整備に最適なトルクレンチの種類
トルクレンチには、4種類の形状のものがあります。
- プリセット型
- デジタル型
- プレート型
- ダイヤル型
バイク整備に向いているのは、プリセット型とデジタル型です。
測定前にトルクを設定し、設定トルクになるとカチッという音と同時に首が軽く振ります。
トルクを設定し、設定トルクになると音で知らせてくれます。
プレート型とダイヤル型は、現在どれだけのトルクが掛かっているか、針を読まなければなりません。
狭い箇所での使用が多いバイク整備だと、針を読むのが困難な場面もあります。また、プレート型だと本体が大きくて邪魔になるのでバイク整備には向いていないです。
トルクレンチの使い方
プリセット型とデジタル型のトルクレンチの設定方法を説明します。
プリセット型
プリセット型のトルクレンチでは、「縦の目盛り(主目盛り)」と「横の目盛り(副目盛り)」を足した数字が設定トルクとなります。数字の大小はトルクレンチによって様々ですが、設定方法はプリセット型ならほとんど同じです。
設定トルクに達すると、「カチッ」という音とともにラチェットヘッドの首が振ります。
【例題】
この状態では主目盛りが10の位置、副目盛りは0の位置なので、10Nmに設定されています。
こちらは主目盛り20、副目盛り0、よって20Nm。
最後に、主目盛りは20と25の間、副目盛りは3。
これは23Nmとなります。
デジタル型
デジタル型トルクレンチの設定方法は製品によって異なりますが、上下ボタンで数値を合わせるといったもので難しいものではありません。
プリセット型のように計算する必要もないのでデジタルの方が簡単だと感じる方も多いと思います。
また、機種によっては今どれだけのトルクが掛かっているのかリアルタイムで表示する機能があったり、設定トルクに達するとブザーだけでなくLEDランプで知らせてくれるものもあります。
使用上の注意点
トルクレンチの使用に関して、いくつか注意点があります。
トルクレンチで緩め作業はしない!
固くしまったボルト・ナットをトルクレンチで緩めると、精度が大きく落ちてしまいます。
ラチェット回転方向の切り替えがついているので緩めに使えないこともないですが、トルクレンチの精度を保ちたいのなら締め付け測定だけの使用にしましょう。
トルクレンチは精密機器なので、正しい使い方をしましょう。
ダブルチェックは控えよう!
一度設定トルクで締め付けた後に、不安だからともう一度カチッと二度締めしてしまうことがよくあります。
これをすると設定トルクからズレが生じます。
そこまで大きなズレでないとしても、せっかく規定トルクで締めているのですから一回で十分です。一回目を信じられないなら二回三回と数を増やしても一緒です。
もしカチッとなったかわからないと不安なら、一度緩めてからもう一度締め直すことをおすすめします。
ダブルチェックを推奨する方もいますが、私はダブルチェックは必要ないと考えます。
保管方法
トルクレンチはとてもデリケートな工具なので、保管方法を誤るとすぐに精度が落ちます。
プリセット型トルクレンチは、使用後に設定値を最小値に合わせておきましょう。
その理由は、トルクレンチの内部にはバネが入っているのですが、これの張力によって精度を保持しています。
使用した設定値のまま保管してしまうと、長時間バネにストレスが掛かった状態になり、張力に狂いが出て精度が落ちます。
最小値がバネには程よい負荷だと言えます。
また、湿気により内部にサビが発生するといけないので、乾燥剤(お菓子に付いているものでいいので)を一緒にケースに入れて保管しましょう。
取り扱い説明書に保管方法が明記されているなら、その通りに保管してください。
バイク整備におすすめのトルクレンチ
ここでは数あるトルクレンチの中から、プロも使っている精度の高いものから、DIY向けの購入しやすいおすすめのトルクレンチを紹介しています。
点検整備用の一本だけを考えているなら、10~60Nmのものを。
全ての箇所の整備やレストアを考えているなら、5~25Nmと20~100Nmというように、二本で広い範囲を管理できるように選びましょう。
【東日】モーターサイクル用トルクレンチ
【製品情報】
- 精度:±5%
- ハードケース付き
- 競技用車両の組立に最適。
- モータースポーツ用トルクレンチ。
品番 | 差込角 | トルク測定範囲 | 一目盛り | 重量 |
---|---|---|---|---|
MTQL40N | 3/8″ | 5~40Nm | 0.5Nm | 450g |
MTQL70N | 3/8″ | 10~70Nm | 1Nm | 470g |
MTQL140N | 1/2″ | 20~140Nm | 1Nm | 770g |
東日製作所は、国産メーカーのトルクレンチと言えばトーニチと答える人が多い、日本を代表するトルクレンチメーカーです。
その確かな精度と長く使える強度、使いやすさには定評があります。バイク整備に特化したモデルがあり、サイズ別に3種類あるので必要とするトルクレンチを見付けることができるでしょう。
本格的な整備をするなら、トーニチのトルクレンチを選んでおけばまず間違いないと言えるでしょう。
◆使用者の感想
- ホームセンターの安物を使っていたが精度に不安があり、日本製で信頼あるメーカーの東日を選びました。さすが東日!という存在感で大満足です。
- エンジン回りのトルク管理はシビアなので、信用できる東日トルクレンチしか使えません。安価なトルクレンチを買っても信頼性がないと意味がない。
- やっぱりトーニチが一番!トルク管理にはお金をかけるべき!ここをケチると後々痛い目に遭う。
- 自分でバイク整備をすると決めてから、色々調べて東日に出会いました。値段は高いですが安全と愛車の為には必須ツールですね!
【TONE】プレセット形トルクレンチ(ダイレクトセットタイプ)
【製品情報】
- 差込角:3/8”(9.5㎜)
- 歯数:20枚
- 付属品:取扱説明書、校正証明書
- トルク設定は直接数値を読み取ることができるダイレクトセットタイプ。
品番 | トルク測定範囲 | 一目盛り | 重量 |
---|---|---|---|
T3MN20 | 4〜20Nm | 0.2Nm | 300g |
T3MN25 | 5〜25Nm | 0.2Nm | 300g |
T3MN50 | 10〜50Nm | 0.5Nm | 520g |
T3MN100 | 20〜100Nm | 1Nm | 750g |
TONEのダイレクトセットタイプトルクレンチは、従来のような主目盛・副目盛を読み取る必要がなく、スコープ内に直接数値が表示される作りとなっています。
これにより設定ミスを防ぐことができ、直感的に素早く設定ができます。細かな目盛りを読むのが苦手、老眼で見えにくい、といった方にも好評です。
バイク整備用としても最適なラインナップを揃えています。
価格は高くはありますが、国産メーカーの信頼性と高い評価、そしてダイレクトセットタイプで人気の高いトルクレンチです。
◆使用者の感想
- いつもは目盛りで合わせるタイプを使っていたが、これはトルク表記の見やすさ、設定のやりやすさがかなりいい!TONEということで信頼性も高く、トルク到達時のカチッと音も安物とは違いしっくりくる。
- 加齢で目盛りが読みにくかったが、このトルクレンチはスコープに数字が表示されるので見やすく設定も簡単。仕事で使っているが、スムーズに設定が変更できてすごく便利。TONEの校正証明書もついて信頼度も高い。
- You Tubeで使っているのを見て、これは便利だと欲しくなり即注文!老眼の自分でも文字が大きいので設定値を合わせやすい。これはおすすめ!
- ダイアルはスムーズに回り、カチッと確かな手ごたえで満足度は高い。価格は高いが納得の製品です。
【SK11】デジタルトルクレンチ
【製品情報】
- 差込角:3/8”(9.5㎜)
- 測定範囲:3~60Nm
- 測定精度:右ネジ±3%・左ネジ±4%
- 測定単位:Nm(単位換算機能付きkgf・cm、lbf・in、lbf・ft)
- ラチェットギア数:52山
- 電源:単4乾電池2本
- 付属品:単4乾電池2本・電池カバー用ドライバー・ハードケース・取扱説明書・検査成績表
SK11のトルクレンチはデジタル式となっています。
デジタル式の特徴としては、今どれだけのトルクが掛かっているのかがリアルタイムで表示されます。
設定操作も簡単で、規定トルクに達するとブザー音とLEDの光で知らせてくれます。また、こちらの製品では左右どちらのトルク測定もできるので逆ネジの管理も可能です。
設定トルク値と測定トルク値の単位を、他の単位に換算出来る便利な機能も付いています。マニュアルを見ていてNm以外の単位が出てきても安心ですね。
これだけ多機能で、測定範囲は通常のトルクレンチの2本分はあるので、初めてのトルクレンチとしてもおすすめです!
◆使用者の感想
- コストパフォーマンスが高いトルクレンチ。多機能でトルク範囲が広いのが嬉しい!ブザー音とLEDも分かりやすい。トルクがリアルタイムで表示されるので、アナログのトルクレンチよりも使いやすい。
- 表示は見やすく、ブザーで知らせてくれるので便利!設定方法も簡単なので機械音痴でも問題なかったです。緩め方向も測定できて便利です!
- 初めてのトルクレンチですが、今までの手締めが弱かったことが判明。これで締め過ぎも防止できます。買ってよかったです!
- デジタルの便利さに感動!使い勝手も良く、精度も高いのでお気に入りのツールです。メーカーのファンになりました!
【E-Value】プリセット型トルクレンチ
【製品情報】
- 差込角:3/8”(9.5㎜)
- ハードケース付き
品番 | トルク測定範囲 |
---|---|
ETR3-25 | 5~25Nm |
ETR3-110 | 20~110Nm |
E-Valueのトルクレンチはプリセット型で扱いやすく、測定範囲も理想のトルク範囲のベーシックなトルクレンチです。
この商品の一番のポイントは、何よりもリーズナブルな点です。しかし、作りは値段以上にしっかりしたもので、ネットでの評価は高くコストパフォーマンスの高いトルクレンチです。
目盛りが非常に見えにくい製品もありますが、こちらは色付きの目盛りで読みやすいです。
まとめて2本購入しても安いので、使用頻度の少ないホビーユーザーの入門用におすすめです!
◆使用者の感想
-
- メモリが見やすく、設定トルク到達時の首の振り方も問題ない。使い勝手も良くリーズナブルでいい買い物でした!
- 値段の割りにはしっかりした作り。DIYで使うだけなので、使用頻度が少ないのでこれで十分!手締めよりは信用できるので買ってよかった。
- 口コミがよかったのでこれにしました。高いものと比較はできませんが、素人整備には十分な性能です!
- バイク整備に使いやすいサイズ!プロ向けではないでしょうが、たまに使う程度なのでこの価格で買えてよかったです!
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