おもちゃ等のプラスチック製品の割れや、車・バイクの樹脂パーツの破損に頭を抱える人は多いでしょう。
最近のプラスチック用接着剤は強力な製品も多いですが、多くの製品には一部のプラスチックには使用できませんと記載されています。
「割れたプラスチックをくっつけようとしたけどつかなかった。」という場合は、その一部のプラスチックである可能性があります。
そこで今回は、接着剤を使わずに電熱で樹脂パーツの接着・穴埋めなどの補修が行える、プラスチックリペアキットを紹介します。
接着剤では難しいバンパーのひび割れ補修も、プラスチックリペアキットならDIYで補修可能です。
接着剤がつきにくいプラスチック
接着剤がつかないプラスチックは、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、ナイロン系といった素材です。
特にポリエチレンとポリプロピレンは接着が難しいとされ、一般的な接着剤、瞬間接着剤やボンド、強力な接着剤であっても接着はできません。
しかし、この二種類のプラスチックは、車やバイクの樹脂パーツ、おもちゃ、家電の樹脂部、バケツ、ゴミ箱、ポリタンクといった、身近なところにあるプラスチック製品の多くを占めており、割れた時にはなんとか補修をしたいものです。
これらが接着できない理由に、疎水性という特徴があります。疎水性とは、水と混ざりにくい、水に濡れにくいといったもので、ポリエチレン・ポリプロピレンには接着剤が馴染まず、撥水加工のように弾いてしまいます。
逆に木材や金属は、液体を弾かず接着剤と馴染みやすいため、強力な接着が可能となります。
今回紹介する方法は、接着剤といった化学的なものではなく、溶かしてつける・補強材を埋めるといった物理的な方法です。少し手間はかかりますが、接着剤のようにポロッと取れることもないので、丁寧に補修したい箇所にはおすすめの方法です。
それでは、その補修キットを2点紹介します。
プラスチック溶接棒で幅広い補修!
【ストレート】プラスチックリペアキット 17-780
この製品は、プラスチック溶接棒を熱で溶かして、破損部分の接着・穴埋めができます。
亀裂の入ったプラスチックを補修する際に、数種類ある付属のプラスチック溶接棒から母材と同じ材質のものを選び、本体先端コテで溶接棒を溶かして亀裂を溶着させます。
劣化して強度が落ちてしまった樹脂パーツも、同じ樹脂素材で厚く盛って補強することもできます。対応している樹脂素材も多く、このツールキットで多くのプラスチック製品の補修が可能となります。
同じ素材でくっつけるといった単純な接着方法ですが、コテの使い勝手がよく、今までにありそうでなかった優れた製品です。充電式でコードレスという点も持ち運びができて便利です。
プラスチックリペアキットの仕様と溶接棒の種類
【製品仕様】
- 内蔵電池:リチウムイオン 18650(DC3.7V/2400mA)
- コテ先温度:約420~500℃
【キット内容】
- 本体
- 先端保護キャップ
- コテA(写真右)
- コテB(写真左)
- 充電用USBケーブル
【付属品】
- ステンレスメッシュ 50×100mm:2枚
- ABS、PP、PE、PS プラスチック溶接棒:各5本
- PPプラスチック用ワイド溶接棒:5本
溶接棒の内容は、
- ABS
- PP(ポリプロピレン)×2
- PE(ポリエチレン)
- PS(ポリスチレン)
の4種の材質と、PPのみ幅の広いワイド棒が入った合計5袋(各5本)が付属されています。
ポリエステル系樹脂は、基本的に接着剤では充分な強度が得られないので溶着での補修がベストと言えます。
プラスチックリペアキットの使い方
コツや慣れは必要ですが使い方は簡単で、コテAかコテBを選び、溶接棒を溶かして補修箇所を溶着します。
PPワイド棒以外の溶接棒は、コテBのパイプ部に差し込めるようになっているので、補修箇所にダイレクトに溶接棒を送り込むことができます。
PPワイド棒はパイプ部に入らないので、コテAで溶かしながら厚く盛るときや亀裂が広いときに使います。
溶着させた後はコテAで綺麗に均し、成形して仕上げます。必要であれはサンドペーパーやリューターで研磨することも可能です。
ステンレスメッシュで強度を上げる
付属のステンレスメッシュを使えば、亀裂箇所の補強や、穴が空いてしまった箇所の穴埋めが可能です。ステンレスメッシュを亀裂箇所に当てて、コテを押し付けて母材に溶かし込み、その上から溶接棒で覆うように埋めて強度を高めます。
ステンレスメッシュを金切りバサミで必要な大きさにカットします。補修箇所に置いたらコテAでステンレスメッシュの上から熱すると、母材が溶けてステンレスメッシュが埋め込まれていきます。
母材が薄く表面に出てしまう恐れがあるときは、あまり深く埋めずに、ステンレスメッシュを溶接棒で覆うように埋めましょう。
穴埋めも同じ要領で、溶接棒でステンレスメッシュを覆い隠すように塞いでいきます。
先端パーツの追加で広がる用途
このリペアキットには付属のコテヘッドの他に、ハンダこて・ホットナイフ・溶着ピン・トーチといった取り替えヘッドが別売りで販売されています。
ハンダこてヘッドでは、コードレスのハンダとして役立つのはもちろんのこと、プラスチックリペアで細かい箇所の補修時にはこの先端が細いヘッドは便利です。
ホットナイフヘッドはプラスチック板の切断・整形に役立ち、トーチヘッドはシガーライターのような電熱トーチで、樹脂パーツを曲げたり変形させたい時に使えます。
なかでも特におすすめなのが「溶着ピンヘッド」です。
溶着ピンヘッドの使い方
写真のように溶着ピンをセットし、電熱でプラスチックを溶かしてピンを埋め込みます。すると割れたプラスチック同士を繋げることができ、中に骨組みを作ることができるので、かなりの強度で補修できます。ピンの足部分はニッパーで切断します。
しかしこのままでは溶着ピンでを刺した箇所に隙間ができるので、ここをプラスチック溶接棒で埋めてあげます。するとさらなる強度UPとなります。
こちらのショート動画がわかりやすいです。
ちなみに、このヘッドパーツではこの向きでは使えません。
全てセットにして売ってしまうのではなく、使用者が必要なヘッドアクセサリーだけを買い足すことができる点も良心的に感じました。
これらの追加パーツを使うことで作業の幅が広がるところも、このツールの面白いところです。
注意点
同じ箇所を煙が上がるまで続けて熱してしまうと、樹脂は炭化してしまい強度は格段に落ちてしまいます。
スイッチを切ってからも、しばらくはプラスチックを溶かせるだけの熱は持続しますので、適度にスイッチのON/OFFを切り替えて温度調整をするといいです。濡れタオルを用意しておいて温度調整をするのもいいでしょう。
また、コテ先端は500℃と非常に高温で、スイッチを入れてからの温度上昇が結構早いので、触れてしまわないようには気を付けましょう。また火事の恐れがあるので使用後は放置しないようにしましょう。
◆使用者の感想
- 同じような手法は昔からあり、昔ははんだごてでやっていたがこのツールは使い勝手がすごくいい!コテ先端は斜めカット形状で面が広く成形がしやすい。付属品も豊富で、追加パーツも販売されているので色々できるのも嬉しい!
- プラスチックの補修補強において現段階で最強のツール。ただし、一定の器用さは必要。充電式でコードが邪魔にならず作業しやすい。モバイルバッテリーを持っておけば充電の心配もなくどこでも持ち運べます。
- 溶着ピンやステンレスメッシュを併用したときの強度は、補修前よりも数段に上がっている。別売アダプターを買えば作業の幅も広がってすごく楽しい!本当におすすめできるツールです!
- 接着剤では不可能な補修ができる。値段も安いのでおすすめ。バッテリーが小さいので広範囲、長時間の作業では途中で充電が必要。
商品ページ
電熱溶着ピンで強力補修!
【ストレート】プラスチックリペアキット 17-620
こちらのプラスチックリペアキットは、AC100V(家庭用コンセント)に繋げる電源コード式です。
前項のリペアキットとは違いこれでは溶着ピンしか使えませんが、電源式であるため安定した出力で作業ができるので、バンパーなどの広範囲の補修に適しています。
溶着ピンの利点
溶着ピンでの補修は、ピンに電気を流し、電熱でプラスチックを溶かして溶着ピンを埋め込みます。
接着剤のように表面だけを接着するのとは違い、内部に芯(骨組み)を通すので非常に強固に仕上がります。
接着剤では「面」でないと強力には接着できず、「点や辺」では負荷がかかると簡単に取れてしまいます。また、ポリエチレンやポリプロピレンは通常の接着剤ではつきません。
強力な接着剤を使って一時的についているように思えても、力が掛かったり、不意な衝撃でいきなりポロッと取れてしまいがっかりすることが多いです。
しかし、溶着ピンなら接着不可能な難接着物も関係なく補修できます。
車やバイクには、広い範囲でポリエチレン・ポリプロピレンといった難接着物が使われているので、接着剤での修復に限界を感じているならプラスチックリペアキットがおすすめです。
溶着ピンでの補修方法
樹脂製の自転車ペダルを溶着ピンで補修していきます。
1. 電源を入れ、プラスチックの厚みに合わせて温度調整ダイヤルを回す。
2. ハンドル先端の電極にピンをセット。
3. 接着面にピンを軽く押し当ててハンドルのスイッチを押し、 ピンの温度が上がるのを待つ。
4. ピンが適度な深さに埋め込まれたらスイッチを離し、プラスチックが冷めるのを待つ。
5. プラスチックが冷え固まってから、ピンからハンドルを抜く。
6. 範囲に応じてピンを複数個埋め込んでいく。角度があるところにはV形のピンを使う。
7. プラスチックから出ているピンの足部分をニッパーで切り取る。
8.リューターでならしたり、パテや前項のプラスチック溶接棒で溶けた隙間部分を埋める。(写真はパテを使用。)
9. 完成!今回は目立たない場所なので強度重視のパテで、研磨で整えず仕上げました。
バンパーなどの補修では、必要であれば塗装をしましょう。
ピンの種類
ストレートのラインナップでは、ピンの形は3種類あり、太さはそれぞれ0.6mmと0.8mmがあります。
波の小さいピン・・・通常よく使うピン。平面に使います。
V形のピン・・・角度があるところに使います。
波の大きいピン・・・平面の接着面が長い場合や、クリアランスのない場所に使います。
これらのピンは、前項の「溶着ピンヘッドアダプター」でも使用可能です。
注意点
- 長時間押し当てて、プラスチックを溶かしすぎてピンを貫通させない。バンパーなど外観に影響があるものは要注意!
- 接着面に押し当てるときは力を入れず、熱で溶けるのを待つ。強く押し込むとピンが曲がったり、プラスチックがいびつに溶けて隙間が広がってしまい、強度が落ちます。
- 一度ピンを埋め込むとやり直しが効かないので、挿入箇所はあらかじめ決めておくこと。
上記のような注意点があるので、ピンを埋め込むことができない薄いプラスチックには向かないです。
◆使用者の感想
- バイクのフェンダーがバキバキに割れてしまったので、その補修に使用。使い方は簡単だったので、初めてでも綺麗に補修できました!強度もあるので、補修後も割れずに問題なく走れています。
- とても便利!カウルやフェンダーは接着剤では強度的に不安だが、プラスチックリペアキットなら芯が通っているので安心。補修後に、パテ付け、塗装で表から見れば新品同様まで持っていけます!
- バンパー、カウル、エアロ修理に重宝しています。使い方次第で色々応用できそう。パテや塗装で上手に仕上げれば、割れがあったことに気付かないところまで補修可能です。
- 接着剤では着かなかった樹脂パーツの補修が可能に!修理の幅が広がります。ストレートのプラスチックリペアキットは、値段は安いが仕事でも十分に使える。おすすめ!
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