エンジンオイルを交換する際に、オイルフィルター(オイルエレメント)とドレンボルトの締付けはどのようにされていますか?
プロの整備士や経験豊富なサンメカさんのなかには、感覚で締めているという方も多いでしょう。
しかし、この感覚というのもいい加減なものなので、別の整備工場に持っていった時に、「強く締めすぎていて緩められない!」「ネジ山が損傷している!」と言われたという話もよく聞きます。
そこで今回は、適切な力でオイルフィルター・ドレンボルトの締付けをする為に、オイル交換に最適なトルクレンチを紹介します。
オイル交換でのトルクレンチの必要性
手元にトルクレンチがない場合、オイルフィルターの締め具合については、
- 手で目一杯締める。
- パッキンが当たってから(着座後)、3/4回転。
というように、感覚で締めることも実際にあります。慣れている方ならこのやり方でも十分でしょう。
しかし、この感覚でオイルフィルターやドレンボルトを締める時、緩むと怖いからと強めに締めてしまうことが多いです。
もちろん、締付けが弱いとオイルが漏れたり、走行中に脱落する可能性がありますが、逆に強すぎてもパッキンの変形やオイルフィルター自体の変形でオイルが漏れることがあります。
そして、エンジンオイルが漏れていることに気付かずに走行を続けると、最悪の場合エンジンが焼き付く恐れがあります。トルクレンチを使い、適正トルクで締めておくことで安心して乗り続けることができます。
強く締めすぎるとあとが大変
冒頭で、「強く締めすぎていて緩められない!」「ネジ山が損傷している!」と書きましたが、これは私の周囲でも本当によくある話です。
どうしたらいいのか?道具を貸して欲しい!と頼まれたことが何度かあります。
次のような状況が多いので、おそらくトルクレンチを使っていないと考えられます。
- 前回のオイル交換は自分でやった。(知人はトルクレンチは使わなかったとのこと。)
- 中古車購入後、初めてのオイル交換。(前オーナーか中古車販売店が締めすぎている。)
- オイル交換はカー用品店やガソリンスタンドでやってもらっている。(整備士が締めすぎている。)
トルクレンチを使わずに締める時には、「緩むと怖いから念のために····」と、最後に「クッ」と増し締めしているのでしょう。
外し方はまた別の記事で書きますが、強く締めすぎているオイルフィルターやドレンボルトを外すのは一苦労です。
特にドレンボルトでよくある最悪な現象は、過剰トルクによるオイルパンのネジ山損傷です。
★オイルパンのネジ山修正には、こちらのツールがおすすめです。
★ドレンボルトの角がなめてしまった時には、このソケットが使えます。
オイル交換に最適なトルクレンチを選ぶポイン
トルクレンチを選ぶ上で最も重要なのは、トルク範囲です。
例えば、「タイヤ交換で必要なトルクレンチ」と、「オイル交換で必要なトルクレンチ」は全く別物です。そこを考えずに選んでしまうと、全く使い物になりません。
目的に適したトルクレンチを選べるように、解説していきます。
必要なトルク範囲
それぞれの車両によって、オイルフィルターやドレンボルトの適切な締め付け力(規定トルク)が決められており、整備マニュアルに規定トルクが記載されています。
もしくは、オイルフィルターの箱に記載されている参考数値に従って締める必要があります。
- ドレンボルト:25N·m前後
- オイルフィルター:10〜30N·m
当然、車種によって異なりますので、上記はおおよその目安となります。必要なトルクを測定できるトルクレンチを選びましょう。
トルクレンチの差込角
【差込角3/8″のオイルフィルターレンチ】
オイル交換用のトルクレンチは、差込角3/8″(9.5mm)がおすすめです。いくつか理由を上げていきます。
- オイルフィルターレンチは、差込角3/8″のものがほとんど。
- 測定トルク範囲を考えた時に、差込角3/8″の製品が最も候補に上がる。
- 使えるソケットの種類が多いので、その他の整備にも使える汎用性がある。(プラグレンチ等もほとんどが3/8″)
- オイル交換での使いやすさを考えると、トルクレンチの全長が1/4″(6.3㎜)は短い、1/2″(12.7㎜)は長い。(短いと力を入れにくく、長いと邪魔。)
★トルクレンチの使い方、トルクの設定方法についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
おすすめのトルクレンチ4選
今回紹介するトルクレンチは、使いやすさを考慮してプリセット型とデジタルタイプの2種類からになります。
- プリセット型:設定トルクに達すると、カチッという音と共に、ヘッド部がカクンと倒れる。
- デジタルタイプ:製品によって違いがあるが、ほとんどの製品で音とLEDで知らせる。
それでは、おすすめ品の紹介に入ります。
- 【RebarTech】差込角9.5mmトルクレンチ10〜60N.m
- 【SK11】デジタルトルクレンチ 差込角 9.5mm 3~60N.m
- 【STRAIGHT】トルクレンチ デジタル式 差込角3/8″(9.5mm) 4〜80N.m
- 【E-Value(藤原産業)】プレセット型トルクレンチ 差込角 9.5mm 20~110N.m
【RebarTech】差込角9.5mmトルクレンチ 5〜60N.m
【製品情報】
- 差込角:3/8”(9.5㎜)
- 測定トルク範囲:5〜60N.m
- 測定精度:±3%(時計回り)/±5%(反時計回り)
- ギア数:72山
- 全長:300㎜
- 重量:450g
- プレセット型、リバーシブル(時計回りと反時計回り)対応。
- 黒の保護ケース、精度校正証明書、取扱説明書付き。
RebarTech製のトルクレンチは、車・バイクのオイル交換や、各種バイクメンテナンスに最適なトルク範囲となります。
全長が30cmあるので、60N.mまでの締付けであれば楽に作業ができるでしょう。
トルクの設定方法は、赤いスリーブを下げている間はロックが解除され、ハンドルを回してトルク設定ができるようになるので、主目盛りと副目盛りを合わせます。
ロックの解除方法がワンタッチで、操作性がいいのも魅力です。また、レーザー印字で数字がはっきりと読みやすい点も好印象です。
そして、ソケットの脱落を防ぐプッシュリリース式となっているなど、この価格にしては優秀な機能が盛り沢山です。
お手頃な価格ですので、とりあえず一本持っておきたいという方、初めてのトルクレンチ購入という方に、おすすめの製品です。
◆使用者の感想
- まず見た目がかっこいい!質感もよく、安いがすぐに壊れるということはなさそう。校正証明書が付いているので、精度面でも安心です。
- バイクのドレンボルト用に購入。国内メーカーのものと比べて、現状では精度に差はない。どこまで精度が保たれるかわからないが、この価格なら趣味用としてはありですね。
- 安価なトルクレンチですが、バイク整備で普通に使えています。一応校正証明書も付いていて手頃な価格なので、一本は持っておいても損はないですね。
【SK11】デジタルトルクレンチ 差込角 9.5mm 3~60N.m
【製品情報】
- 差込角:3/8”(9.5㎜)
- 測定トルク範囲:3〜60N.m
- 測定精度:右ネジ±3%・左ネジ±4%
- 測定単位:Nm(単位換算機能付きkgf・cm、lbf・in、lbf・ft)
- ギア数:52山
- 右ネジ、左ネジ両方向の測定可能。
- 電源:単4乾電池2本
- 付属品:単4乾電池2本・電池カバー用ドライバー・ハードケース・取扱説明書・検査成績表
SK11からは、デジタルタイプのトルクレンチを紹介します。
まず、一番に目につくのが大きな液晶画面です。この画面に、今どれだけのトルクが掛かっているのかが表示されるので、デジタル部を見ながら力の調節が可能です。
トルクの設定もこの画面で行うので、「プリセット型は目盛りが見にくい」「プリセット型は目盛りでの設定が難しい」という方にも選ばれています。
表示方法は2種類あり、掛かった力の最大値が表示される「ピークホールドモード」と、リアルタイムでトルクが表示される「トラックモード」があります。
リアルタイムでトルクを確認するだけでなく、画面が見えない場面でも、実際にどれだけのトルクが掛かったかを確認できるのはありがたいですね。
また、暗所であったり角度的に画面が見えにくい場合でも、締付けトルクに近付くと音と光で知らせてくれる機能があります。
さらに、「設定トルク値」と「測定トルク値」を他の単位へ換算出来るので、マニュアル等を見ていてN.m以外の単位が出てきても安心ですね。
下は3N.m〜と測定範囲が広いので、車・バイク整備だけでなく自転車整備用としても選ばれています。
デジタルタイプは少し値段が高くなりますが、デジタルならではの高機能が搭載されています。こらから本格的に整備をする、入門用は卒業、という方にもおすすめできるトルクレンチです。
◆使用者の感想
- リアルタイムでのトルクを確認しながら作業ができるので、安心で作業が楽しいです!設定も簡単で使いやすく、オイルエレメントやドレンボルトの締付けにはちょうどいいトルクレンチです。
- ロードバイクや二輪車のパーツ取付に必要なため購入。老眼のためアナログの目盛りが見えないのでデジタルにしました。最初は設定に手間取ったが、慣れれば簡単。高級感もあり品質にも大満足。
- 初めてのデジタルトルクレンチですが、画面が見えないところでも掛かったトルクの最大値が残るので作業しやすい。アナログタイプにはない便利さで買ってよかったと思える。全長がもう少し長ければ更によかった。
【STRAIGHT】トルクレンチ デジタル式 差込角3/8″(9.5mm) 4〜80N.m
【製品情報】
- 差込角:3/8″(9.5㎜)
- 測定トルク範囲:4~80Nm
- 歯数送り角:72枚/5°測定範囲:4~80Nm
- 精度保証範囲:(4~16Nm:正転時±4%/逆転時±5%)(17~80Nm:正転時±3%/逆転時±4%)
- 表示単位:Nm/ft-lb/in-lb/kg-m/kg-cm
- 全長:230mm
- 重量 :0.58kg
- 使用電池:単四電池2本(連続使用時間55時間)
- 正回転、逆回転どちらも測定可能。
- 液晶はバックライト付き。
- 専用ケース、校正証明書付き。
続いて、ストレートのデジタルトルクレンチです。
こちらはトルク範囲が4〜80N.mと、測定範囲がかなり広く、ここまで広いトルクレンチはあまり見ないです。
トルクの表示方法は、掛かった力の最大値が表示される「ピークモード」と、リアルタイムでトルクが表示される「トレースモード」があり、SK11と名称は異なりますが同じ機能です。
画面はバックライト付きなので、夜間や暗所であっても画面を見ることができます。
液晶画面で測定したいトルク値をセットし、トルクに達すると音とLEDで知らせます。
何と言ってもこれだけトルク範囲が広いので、この1本でトルクレンチ2本分の役割を果たします。オイル交換だけでなく幅広いメンテナンスで使えるのがこのトルクレンチの魅力です。
SK11製では3N.m〜測れるので、そこがストレート製との選択のポイントになります。たったの1N.mの差ですが、ロードバイク等では3N.mが必要な場面もあるので、どちらも紹介しました。
気になった方は、商品ページからも詳細もご覧ください。
◆使用者の感想
- 手頃な値段でありながら測れる範囲が広いので、普通のトルクレンチ2本分の仕事をします。かなりお得です!校正証明書もかなり詳細に記載されており信用できます。
- トルクの範囲が広いのが一番の理由ですが、画面のバックライトが決め手となりました。ボタンの感度もよく設定しやすいです。ケース付きで電源も自動オフなので切り忘れが無いのがいいですね。
- アナログのカチッと音が分かりづらく、デジタルを探していたところ、オイル交換やバイク整備に最適なこちらを見つけました。音も大きく、画面にリアルタイムでトルク表示がされるので安心して作業ができます。
【E-Value(藤原産業)】プレセット型トルクレンチ 差込角 9.5mm 20~110N.m
【製品情報】
- 差込角:9.5mm(3/8″)
- 測定範囲:20N.m~110N.m
- 副目盛り最小目盛り:1N.m
- 測定精度:右回転(時計回り)±4%、左回転(反時計回り)±6%
- 右回転、左回転どちらも測定可能。
- 専用ハードケース付き。
E-Valueの非常に安価なトルクレンチ。
トルク範囲は20N.m〜と、紹介しているトルクレンチの中では最小値が高めなので、車種によっては気を付けなければなりません。
その反面、最大値が110N.mまで測れるので、軽自動車のタイヤ交換(車種によっては普通車も可)にも使うことができます。
トルクの設定方法は、ハンドル下部のつまみを回してロックを解除します。そして、トルクを合わせ終わったら、再びつまみを回してロックします。
昔ながらのトルクレンチといった感じで、一番目に紹介したRebarTech製のワンタッチ仕様と比べると少し手間に感じますが、慣れれば問題はなく、好みの問題となります。
オイル交換での必要トルクが20N.m以上であり、足回りの作業にも使いたいというのなら、この測定範囲のトルクレンチを選ぶのもありだと思います。
◆使用者の感想
- コスパ最高!とにかく一本トルクレンチが欲しかったので、安くても評価の高いこちらを選びました。オイルフィルターの他にはタイヤ交換で使いたかったので、この一本で両方できてお得でした。
- 安いですが趣味で使う分には十分です。安いトルクレンチでも感覚で締めるよりは安心です。オイル交換には少し長いが、タイヤ交換にも使うのでそこは我慢ですね。
- 耐久性はわかりませんが、初期の精度は国内メーカー品と比べても差がありません。頻繁に使うものではないので、安くてもしっかり使えるこのトルクレンチは、DIY用としては最高です!
★タイヤ交換におすすめのトルクレンチは、こちらの記事で紹介しています。
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